第36号 2015年12月 発行 聖ベネディクト女子修道院
日本は、平和憲法に守られ、平和の中で戦後70年と安全保障関連法の成立という大きな節目を迎えた今年、
年代の相違を超えて強い危機感の中に置かれています。
ふと以前、札幌のTさんが修道院で語ってくれた話を思い出します。
昭和22年頃、札幌は苗穂(なえぼ)という所で実際に少年Tさんが体験したことです。
父親が戦地に赴いていたので、カトリックの家庭だったことからフランシスコ会の宣教師が教会の傍に祭壇付きの住まいを提供してくださった。
終戦後は母の知人の紹介で苗穂にあった米軍の補給基地に復員後の父が倉庫番として就職でき、給料を貰えるようになった。
ある日突然、MP(米軍憲兵隊)と警察がジー プで来て土足のままで家に入ってきた。
子供たちは恐ろしさでおびえる中、母が恐る恐る警察に聞くと、補給基地から何か盗まれたので、日本の作業員宅すべてを捜索しているとのことだった。
奥の部屋の祭壇の前で、MPは、突然履いていた靴を脱ぎ祭壇に向って十字を切り、何か祈っていたようだった。
そしてすぐに靴を履き何も言わずに帰って行った。
アメリカ兵から何かされるのではないかと、不安でいた数日後の事だった。
あのMPが何か荷物を持って入って来た。プレゼントと言って置いて帰った。恐る恐る中を見た。
見たことのない食べ物ばかり沢山入っていた。
初めは疑ったがプレゼントと言う言葉を思い出した。パインの絵の缶詰もあった。
生まれて初めて口にする味だった。
その後も月に数回、食料品をプレゼントしてくれた、と。
話し終えたTさんは、神に感謝とほほ笑んだ。
一部の政治家が扇動し戦争へと駆り立てた過去の出来事が、今この日本で再び繰り返されようとしています。
9月19日に安保法制が成立し来春施行されると、最悪の場合、武器が使用可能となる。
戦争はイヤです。
宇宙から見た地球に、国境はなかったと日本人の宇宙飛行士も語っています。
異国の地で素直に信仰を表明したMPのように、キリスト教の隣人愛とは、全ての人が兄弟として生きることの中に実現していくべきではないでしょうか。