第33号 2016年6月 発行 聖ベネディクト女子修道院 

オブレートだより

山路来て何やらゆかしすみれ草

 山中の道ばたに咲いたすみれに心安らいだ様子がうかがえるこの句は、芭蕉の一輪の花に寄せる心遣いがしのばれます。

 自然の中の草木は、置かれた場で成長する宿命を持っているだけに、与えられた場所で美しく開花している姿を見る時、神様の一輪いちりんに対するかけがえの無い、いつくしみが感じられます。

 私がお花を習い始めた頃、先生がおっしゃった言葉を思い出します。
 「お花を生ける時、一輪いちりんの風情を大切に生かすように」とのことでした。
 私がようやく生けた花が、先生の手によって直されたとき、何と生き生きとした生け花に変化したことでしょうか。
 一輪いちりんが互いに生かしあっているかのように、お互いが引き立てあう美しさに心惹かれました。

 若葉が輝く季節になりました。
一雨ごとに、みるみるうちに、水をえた草木は生き生きと葉を茂らせます。
この美しい緑は平和のしるしですね。

 熊本県の震災被害が次々と広がって行く報道を聞き、多くの犠牲者を始め不安なうちに避難生活を余儀なくされていることを思うとき、言葉もありません。
いつくしみ深いおん父に全てをゆだね、一日も早い復興を心から祈る日々です。

シスタープラチダ 芦川まさ