2018年12月 第39号 発行 聖ベネディクト女子修道院
クリスマスが近づき町に粉雪が舞う頃になると決まって、母が読んでくれた童話を思い出します。
それは、オスカー・ワイルドの『幸せな王子』という童話なのですが、あのツバメは可哀相と子供心にもツバメに感情移入して、哀しい気持ちになったものです。
ところが自分が孫に昔話をするような年齢になって、大学の講義の中でまたこの物語に出会ったのです。
そして、ハビエル・ガラルダ師(イエズス会)に『幸せな王子』の物語を通して、自分を犠牲にする人間ははたして幸せといえるだろうか?
つまり幸せとは一体何であろうか?と問い掛けられたのでした。
あのツバメは幸せだったと言えるのだろうか。
温かいエジプトに行こうと思って、王子様の貴重な像の足下で一休みしていたところ「ツバメさん、ツバメさん」と王子様に呼ばれ、窓から見えるお母さんが大変な病気の娘のために、薬と食べ物を買うお金がないので、自分の刀のルビーを取って飛んで持って行ってくれるように頼まれる。
しかし、エジプトはツバメの幸せであった。
仲間は向こうで待ってくれているし、イギリスの秋は寒いのでツバメは断ります。
でも「ツバメさん・・・」と言われて「それでは今夜だけね」。
あくる日また肺結核に罹っている貧しい大学院生に、目のダイヤモンドを持って行ってあげるように言われる。
その翌日もまた雨の中でマッチを売っている可哀相な女の子に、もう一個のダイヤモンドを持って行ってあげるように頼まれて、・・・。