第36号 2019年6月 発行 聖ベネディクト女子修道院
昨年11月24日に修道生活68年、享年95歳で帰天した、わたしたちの姉妹
Sr.レナータ 森 治子のために、どうぞお祈りください。
シスターレナータの病院での独り言「いやーね」。夢でも見ていたのでしょうか。
大きくも、小さくもない静かな声で、目を閉じたまま微笑んでいました。
2018年11月19日のことでした。その時は、あんなに早く逝かれるとは思っていませんでした。
シスターレナータとの懐かしい思い出を、いくつか辿ってみたいと思います。
シスターレナータにはたくさんお世話になりました。
特にアメリカでの会議に出席の時など、英語の不得手な私のために、喜んで通訳してくださいました。
また、アメリカに来たついでだからと言って、ハワイに寄ったりサンフランシスコにも立ち寄り、シスターオリビアのご親戚に泊めていただいたりしました。
更にシスターポリナのご親戚宅にも宿泊させてもらい、思いがけずあちこちの美しい景色を楽しませていただきました。
シスターレナータは日本人として、最初のベネディクト会員でした。
そのため日本での修道院運営やシスターたちの働く場など細々と決める必要があったようです。
学校や幼稚園を開設するための計画、相談も大変だったと思います。
もう一つの思い出はベネディクト女子高校の敷地内にあった私たちの修道院を将来、どこかへ移転するための土地を探していた頃のことです。
鷲別や登別の近くをシスターレナータの運転する車で走りつつ、「学校からも駅からも遠くなく、近くもなく・・・・」とつぶやきながら物色したことを思い出します。
その甲斐あって、今私たちの修道院が建っている水元町は素敵な所です。修院は高からず低からず小高い丘の上にあって、木々や可愛い草花、時々顔をみせるエゾリス、エゾ鹿、狐、鶯を始めとする小鳥たち等、四季折々の変化に富んだ自然に囲まれています。
眺めの良い道路の向こうは谷、右のほうに目をやれば太平洋。
好天の日は海の向こうに函館の山々、左側には室蘭岳が望めます。
春から夏は周囲の笹薮は鶯のデートの場と化し、ラブコールが飛び交い、そして私たちは神様を身近に感じ、賛美することができます。
自然と超自然は一つといわれますが、ここではそれが実感できるのです。
こうして、日本の聖ベネディクト女子修道院の土台を築きご苦労下さったシスターレナータに心から感謝します。 これからは神様のみもとで私たちのため取り次いでください。
シスター、有難うございました。
「大変だったのよ、本当に。あなたたちは」この言葉は、クラス担任として私たちをどのように思っていらしたのか、お伺いした時のシスターからの凝縮した答えでした。
小学校を卒業したばかりの幼い私たちは、大人の階段を昇り始めようという好奇心一杯で、何事にも臆することなく、新しいベネディクト女子学園での生活をとても楽しみに動き出しました。
若さと冒険心も加わり、少女たちは数々の失礼な言動をシスターにぶつけ、それでも困ったような、呆れたような顔をなさりながらも、慈愛に満ちた優しい言葉で接してくださいました。
時には厳しく叱ってもくださいました。(とても、怖かったですよ。)
卒業して、もう随分と時間が経ちましたが、シスターが悩まれながら私たちを教育指導してくださいました事、その上で沢山の事を習得して来ることが出来ました。
加えてシスターとのかけがえのない時間に巡り合えたことの幸せを、日々の糧として生かしています。改めて感謝申し上げます。
晩年は車椅子生活を余儀なくされ、不自由さや理不尽さを感じていたのではと思った時もありましたが、お誕生日のお祝いや地方にいる友達が來蘭された時に修道院を訪ね、お会いする時はいつも凛とした若い頃のシスターの姿そのものでした。嬉しかったです。
最後にお目にかかった時の言葉は決して忘れません。
修道院に伺いました時、お話する時間がなく、御自分の身体もとても辛かったにもかかわらず、通院のためのお迎えの運転手さんに「私の子どもたちなの」と紹介してくださり「ありがとう。またいらしてね」と。
もうお目にかかることが叶わない寂しさを身に沁みて感じ、懐かしかった昔の日々を思い出しております。 どうぞ心安らかにおねむりください。
あの頃の少女たちは、みんな優しいお婆ちゃんに成長しています。
主のご復活おめでとうございます。
室蘭の桜は今を盛りに咲き誇っているでしょうか。
私の住む東京ではすっかり葉桜となり、新緑が目に優しい美しい季節になりました。
ベネディクト学園を卒業して早くも半世紀近くになります。
シスターレナータには中学1年生として入学した私たちの担任として、あの黒く長い修道服で迎えてくださいました。
いつもあの修道服の中で手を組んで「あなたたち」という独特のイントネーションで、優しく微笑んでいる姿が忘れられません。
東京の学校に入学して4年間、東麻布の寮でもお世話になりました。私にとって第二の母のような存在で見守っていただきました。
学生時代一度、シスターにお叱りを受けました。怠けて日曜日のミサに行かなかった私を叱ってくださったのです。
その反省があり、今では家人に「教会に住んでは」と言われる程、恵まれた環境におります。
聖ベネディクトの「祈り」を大切にする教えを嚙みしめております。
シスターがお棺の中で「聖ベネディクトの戒律」と「ロザリオ」を握りしめている姿が忘れられません。
シスターレナータに導かれた信仰を感謝しながら歩んで行きたいと思っています。
祈りのうちに。
月一度、「花ニラの会」(お勉強?お喋り)に仲間入りし、シスター方と触れ合う何とも居心地の良い時間・・・こうして修道院に伺う機会をいただきました。
あの日が突然やってきました。嫌な胸騒ぎ!!シスターレナータと玄関先でお話したのが最後になってしまいました。
渡辺さんと久し振りにシスターレナータのお顔拝見といつもの通りインターフォンを・・・・丁度シスターレナータは体調が悪く、病院に向かわれる時でした。足も腫れ、相当に病んでいました。
その日は風が冷たいのにコートを着ようとしないので、渡辺さんが「老いては子に従え!ですよ」とコ―トを着ていただきました。
「そうね、みんな私の子ども達ですものね」と言いながら。
「いつも、あなたたちの事(教え子)お祈りしているわよ」というシスターの声が今も聞こえてきます。 厳しさの中のあの優しさ。
有難う!!ありがとうございます。